6月末で会社を辞めて、年内はしばらく休むつもり。そんな人のもとには、12月になっても年末調整の書類は届きません。年の途中で退職して年内に再就職しなかった場合、払いすぎた所得税を取り戻す手段は自分で行う確定申告(還付申告)だけです。
実は、半年分の給与から天引きされた所得税は、年収ベースで計算し直すとほぼ全額が戻るケースも珍しくありません。2026年分は基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低保障額が74万円に引き上げられたため、戻ってくる金額は例年より増える傾向にあります。
この記事でわかることは次の5点です。
- 年内に再就職しなかった人が確定申告をしたほうがよい理由と、戻る金額の目安
- 必要書類(源泉徴収票・国民年金や国民健康保険の支払い証明など)の集め方
- 還付申告をいつから・いつまでに出せるか(2026年分のスケジュール)
- 失業保険・退職金・副収入がある場合の扱い
- e-Taxでスマホから申告する手順と、よくある失敗
退職して年内に再就職しないと確定申告が必要になる理由
会社員の所得税は、毎月の給与から「1年間同じ給与が続く」前提で概算の税額が天引きされています。12月の年末調整で1年分の正しい税額に精算する仕組みですが、年の途中で退職して年末に在籍していない人は、この精算の対象には含まれません。
そのため、1月から退職日までに天引きされた所得税は払いすぎの状態のまま残ります。これを取り戻すのが還付申告です。申告は義務ではありませんが、出さなければ1円も戻りません。
年末調整と還付申告の違い
| 項目 | 年末調整 | 還付申告(確定申告) |
|---|---|---|
| 対象者 | 12月時点で会社に在籍している人 | 年の途中で退職し、年末に在籍していない人など |
| 手続きする人 | 勤務先 | 本人 |
| 提出先 | 勤務先 | 住所地の税務署(e-Tax可) |
| 反映できる控除 | 生命保険料・社会保険料など一部 | 医療費控除・寄附金控除などを含む全控除 |
| 2026年分の期限 | 2026年12月の給与で精算 | 2027年1月1日から5年間 |
年内に別の会社へ入社した場合は、転職先の年末調整で前職分もまとめて精算できます。その場合の書き方は転職した年の年末調整ガイドで詳しく整理しています。
還付金はいくら戻る?2026年分の試算

戻る金額は「天引きされた所得税の合計」と「1年分で計算し直した正しい税額」の差額です。具体的な数字で見てみます。
モデルケース:月給30万円・6月末退職・扶養なし
- 1〜6月の給与収入:30万円×6か月=180万円
- 毎月天引きされた所得税:約6,700円×6か月=約40,200円
- 会社で天引きされた社会保険料:約4万5,000円×6か月=約27万円
- 退職後に自分で払った国民年金:17,920円×6か月=107,520円
- 退職後に払った国民健康保険料:仮に月1万5,000円×6か月=9万円
1年分で計算し直すと、次のようになります。
| 計算ステップ | 金額 |
|---|---|
| 給与収入 | 180万円 |
| 給与所得控除(2026年分の最低保障額) | −74万円 |
| 給与所得 | 106万円 |
| 社会保険料控除(会社分+国民年金+国保) | 約−46万7,520円 |
| 基礎控除(合計所得489万円以下) | −104万円 |
| 課税所得 | 0円 |
課税所得がゼロになるため、正しい所得税額は0円です。天引きされた約40,200円がほぼ全額戻る計算になります。月給や退職月によって金額は変わりますが、年の前半で退職した人ほど還付額が大きくなりやすいと考えられるでしょう。
ちなみに、退職後に払った国民年金や国民健康保険料を申告に入れ忘れると、そのぶん還付額が減ります。領収書は捨てずに保管しておきましょう。
確定申告に必要な書類チェックリストと提出スケジュール

還付申告で用意するものは、次の表のとおりです。退職直後から集め始めておくと、1月にすぐ申告できます。
| 書類 | 入手先 | ポイント |
|---|---|---|
| 前職の源泉徴収票(原本) | 退職した会社 | 退職日から1か月以内に交付する義務があります(所得税法226条) |
| 国民年金の控除証明書 | 日本年金機構(11月上旬に郵送) | 1〜12月に納付した分が記載されます |
| 国民健康保険料の領収書・納付証明 | 市区町村 | 口座振替なら通帳の記録でも計算できます |
| 任意継続保険料の領収書 | 加入していた健康保険組合・協会けんぽ | 国保ではなく任意継続を選んだ人 |
| マイナンバーカード | — | e-Taxで使うと本人確認書類の添付が不要 |
| 還付金の振込口座 | — | 本人名義の口座 |
| 医療費・ふるさと納税の資料 | 病院・自治体 | 該当者のみ。医療費は年10万円超(所得200万円未満なら所得の5%超)が目安 |
源泉徴収票が届かないときの対処
退職して1か月以上たっても届かない場合は、まず元の勤務先の人事・総務へメールで依頼します。それでも発行されないときは、税務署に「源泉徴収票不交付の届出書」を出すと、税務署から会社へ指導が入る仕組みです。給与明細が手元にあれば、申告書の作成に必要な数字は先に確認できます。
申告はいつから?2026年分のスケジュール
一般的な確定申告の期間は、2026年分なら2027年2月16日(火)〜3月15日(月)です。ただし、税金が戻るだけの還付申告は2027年1月1日から提出できます。混雑する2月後半より前に出すと、還付金の振込も早まるでしょう。
- 2026年11月上旬:国民年金の控除証明書が届く
- 2026年12月:国保の納付額を確認、医療費の領収書をまとめる
- 2027年1月1日以降:e-Taxで還付申告を送信
- 送信から約3週間:指定口座に還付金が振り込まれる(e-Taxの場合の目安)
還付申告は5年間さかのぼって出せるため、2026年分は2031年12月31日まで受け付けられます。過去に退職した年で申告していない年があれば、その分もまとめて取り戻せる可能性があります。
失業保険・退職金・副収入があるときの扱い

失業保険(基本手当)は申告不要
雇用保険の基本手当は法律で非課税とされているため、所得に含めません。月に十数万円を受け取っていても、申告書に書く必要はありません。再就職手当も同じく非課税です。
退職金は「申告書」の提出有無で変わる
退職時に「退職所得の受給に関する申告書」を会社に出していれば、退職金の税金は精算済みです。出していない場合は一律20.42%が天引きされているため、確定申告で退職所得として申告すると多くの場合で還付になります。退職金の源泉徴収票を確認し、「支払金額」と「源泉徴収税額」が大きく差がないときは要注意です。
退職後にアルバイトや業務委託の収入があった場合
短期のアルバイト代は給与所得として、業務委託の報酬は雑所得または事業所得として合算します。どちらも支払元から源泉徴収票や支払調書を受け取っておくと、申告書の作成がスムーズです。
e-Taxでスマホから還付申告する手順
還付申告は、マイナンバーカードとスマホがあれば自宅で完結します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で、次の順に進めます。
- 作成コーナーで「スマホで申告」→「マイナンバーカード方式」を選ぶ
- 収入の種類で「給与」を選び、源泉徴収票の数字を入力(スマホのカメラで読み取りも可能)
- 社会保険料控除に、国民年金と国保の支払額を入力
- 医療費控除・寄附金控除などがあれば追加
- 還付金の振込口座を入力し、マイナンバーカードで電子署名して送信
入力自体は30分ほどで終わる人が多い印象です。源泉徴収票の原本は提出不要ですが、5年間は保管しておきましょう。
よくある失敗3つ
- 国民年金を入れ忘れる:会社の社会保険料だけを入力して、退職後の分が漏れるパターン
- 家族の分を払ったのに控除しない:同居家族の国民年金を本人が払った場合も、本人の控除にできます
- 年金免除を申請したのに満額で入力:実際に納めた額だけが対象です
還付申告と並行して進めたい転職準備
年内に再就職しない人でも、翌年1〜3月は求人が増えやすい時期です。確定申告の書類を集める12月は、職務経歴書を整えたり、転職エージェントに登録して非公開求人の傾向を聞いたりするのに向いています。営業職・IT職・事務職など職種によって求人が増える時期は少しずつ違うため、複数のエージェントを比較して、希望する業界の動きを聞いておくと判断材料が増えます。
特に、退職理由や空白期間の説明に不安がある人は、早めにキャリアアドバイザーと面談しておくと、春の選考で慌てずに済むはずです。登録や相談は無料のサービスがほとんどなので、休養期間のうちに情報だけ集めておく使い方もできます。
退職後の確定申告でよくある質問
Q. 還付金が数千円程度でも申告したほうがよいですか?
A. 手間に見合うかは人それぞれですが、e-Taxなら30分ほどで終わるため、多くの場合は申告して損はありません。住民税の計算にも申告内容が反映され、国保の保険料の判定にも使われます。
Q. 失業保険を受け取っていると扶養に入れませんか?
A. 所得税の扶養(配偶者控除など)は失業保険を所得に含めないため影響しません。一方、健康保険の扶養は基本手当の日額で判定されるため、日額3,612円以上だと入れないケースがあります。
Q. 退職した会社が源泉徴収票をくれません。
A. 交付は会社の義務です。メールで依頼して記録を残し、それでも届かなければ税務署に不交付の届出書を提出してください。
Q. 12月に退職した場合はどうなりますか?
A. 12月の最後の給与を受け取った後に退職した場合は、会社が年末調整をしてくれることがあります。源泉徴収票の「年調」欄や摘要を確認し、年末調整済みであれば原則として申告は不要です。
Q. 確定申告をしないとペナルティはありますか?
A. 還付申告だけの人であれば、出さなくても罰則はありません。ただし、退職後に20万円を超える副収入があった場合などは申告義務が生じることがあります。
Q. 来年の住民税にも影響しますか?
A. 住民税は前年の所得で決まるため、2026年分の申告内容が2027年6月からの住民税に反映されます。国保や国民年金の控除を入れておくと、住民税も適正な金額になります。
払いすぎた税金を取り戻して、次の一歩に備えよう
年の途中で退職して年内に再就職しなかった人は、年末調整の代わりに自分で還付申告をする必要があります。2026年分は基礎控除が最大104万円、給与所得控除の最低保障額が74万円になり、半年分の給与なら天引きされた所得税がほぼ全額戻るケースもあります。
まずは前職の源泉徴収票が手元にあるか確認し、11月に届く国民年金の控除証明書と一緒にファイルしておきましょう。2027年1月1日になったらe-Taxで送信し、戻ってきたお金を次の仕事探しの準備資金に充てるのも一つの方法です。

