有給休暇が20日以上残っているのに、退職届にいつの日付を書けばよいのか分からない。そんな相談は、退職を考え始めた人から特によく聞かれます。実は、有給休暇を使い切ってから辞めたいなら、退職届に書く退職日は「最後に出社する日」ではなく「有給休暇の最終日」にするのが基本です。
この日付を取り違えると、有給休暇が数日分消えてしまったり、会社と退職日でもめたりする原因になります。ここでは、有給休暇の消化を前提にした退職届の書き方と、退職日の逆算方法、会社に有給消化を拒まれたときの対応までを順番にまとめました。
この記事でわかること
- 最終出社日と退職日の違い、退職届に書くべき日付
- 残っている有給日数から退職日を逆算するスケジュール例
- 有給休暇の消化を前提にした退職届の文例
- 有給消化を拒否されたときに確認したい法律上のルール
- 有給消化中の転職活動・ボーナス・社会保険の注意点
有給休暇消化と退職届の関係 退職日は「有給の最終日」
退職までの流れには、混同しやすい3つの日付があります。
| 日付 | 意味 | 退職届への記載 |
|---|---|---|
| 退職届の提出日 | 会社に退職の意思を書面で伝える日 | 文末の日付欄に記載 |
| 最終出社日 | 引き継ぎを終えて最後に職場へ行く日 | 原則として書かない |
| 退職日 | 雇用契約が終わる日(有給休暇の最終日) | 本文に「〇年〇月〇日をもって退職いたします」と記載 |
有給休暇は在籍している社員が使う休暇です。退職日を最終出社日にしてしまうと、その翌日からは社員ではなくなるため、残りの有給休暇は使えないまま消えてしまいます。最終出社日の翌営業日から有給休暇を使い、その最終日を退職日にする、という順番で考えると整理しやすいでしょう。
有給休暇の残日数から退職日を逆算するスケジュール

まずは自分の有給休暇が何日残っているかを確認します。給与明細や勤怠システムに残日数が表示されている会社が多く、分からなければ人事・総務に問い合わせると教えてもらえます。
勤続年数ごとの付与日数の目安
週5日勤務(フルタイム)の場合、労働基準法で定められた付与日数は次のとおりです。有給休暇の時効は2年のため、前年分の繰り越しを含めると最大40日まで持っている人もいます。
| 勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
残20日のケースで逆算する例
有給休暇が20日残っていて、12月末で退職したい人を例に、土日祝休みの会社で逆算してみます。
- 退職日を決める:12月31日(年末年始休暇の扱いは会社の規定を確認)
- 有給消化期間を逆算:営業日で20日分さかのぼると、11月下旬〜12月上旬あたりが有給休暇の初日になります
- 最終出社日を決める:有給休暇初日の前営業日。ここまでに引き継ぎを終えます
- 引き継ぎ期間を確保:担当業務の量にもよりますが、2〜3週間あると落ち着いて引き継げます
- 退職の申し出日:就業規則の「1か月前まで」などの期限から逆算すると、10月中〜下旬には上司へ伝える計算です
カレンダーに「申し出日・最終出社日・有給初日・退職日」の4点を書き込んでから上司と面談すると、話し合いが具体的になります。会社の年末年始休暇や祝日は有給休暇として数えないため、営業日ベースで数えることがポイントです。
有給休暇の消化を前提にした退職届の書き方と文例

退職届そのものに「有給休暇を消化します」と書く決まりはありません。書くのは退職日だけで、有給休暇の取得は別に有給休暇届(休暇申請)で申請するのが一般的な流れです。
退職届の文例(縦書き・手書き)
|
退職届
私儀 令和8年10月〇日 株式会社〇〇 |
「令和8年12月31日」の部分に、有給休暇の最終日を入れます。自己都合退職なら理由は「一身上の都合」で十分で、有給消化や転職先について書き添える必要はありません。
書き方で迷いやすいポイント
- 提出日:上司に渡す日、または郵送する日を書きます
- 筆記具:黒のボールペンか万年筆。消えるボールペンは使いません
- 用紙:白無地のB5かA4。会社に専用の書式があればそちらを優先します
- パソコン作成:横書きでパソコン作成しても有効です。署名だけは手書きにすると丁寧な印象になります
有給休暇届と引き継ぎ計画をセットで出すとスムーズ

有給休暇の消化でもめる原因の多くは、「引き継ぎが終わらないのに休まれると困る」という会社側の不安です。退職届と同じタイミングで次の2つを用意しておくと、話し合いが前に進みやすくなります。
有給休暇届に書く内容
- 取得期間(例:令和8年12月1日〜12月31日のうち営業日20日)
- 取得日数(例:20日)
- 理由欄があれば「退職に伴う年次有給休暇の取得」
引き継ぎ計画表のつくり方
| 業務 | 引き継ぎ先 | 資料の場所 | 完了予定日 |
|---|---|---|---|
| A社の月次報告 | 〇〇さん | 共有フォルダ/営業部/A社 | 11月15日 |
| 新規見積もり対応 | 〇〇さん | 見積もりテンプレート一式 | 11月20日 |
| 取引先への挨拶 | 上司同行 | — | 11月25日 |
A4用紙1枚の簡単な表でも、「最終出社日までにここまで終わらせます」と見える形にしておくと、上司も有給消化を認めやすくなります。現場では、この表を出しただけで「それなら大丈夫」と話がまとまったという例も少なくありません。
有給休暇の消化を拒否されたときに確認したいこと
年次有給休暇は労働基準法39条で定められた労働者の権利で、取得に会社の許可は本来必要ありません。会社には「時季変更権(業務に支障がある場合に別の日へずらしてもらう権利)」がありますが、退職日が決まっている場合はずらす先の日がないため、退職前の有給消化に対しては行使できないと考えられています。
話し合いで伝えたい3つのこと
- 引き継ぎ計画を示し、最終出社日までに業務を終える意思があること
- 有給休暇は労働基準法上の権利として取得したいこと
- どうしても困る場合は、最終出社日を少し後ろにずらす代わりに退職日も後ろにずらす案があること
それでも話が進まない場合の相談先
話し合いで解決しないときは、会社の所在地を管轄する労働基準監督署や、都道府県労働局の総合労働相談コーナーが相談先の候補です。いずれも無料で、電話や面談で相談を受け付けています。会社とのやり取りはメールなど記録が残る形で行い、有給休暇届の控えも保管しておきましょう。
なお、会社が未消化の有給休暇を買い取る義務は法律上ありません。退職時の買い取りに応じる会社もありますが、あくまで任意の対応です。
有給休暇消化中に気をつけたい転職活動・ボーナス・社会保険
有給休暇の消化期間は「まだ在籍している期間」にあたります。休みだからといって何をしてもよいわけではなく、次の点は事前に確認しておくと安心です。
- 転職先への入社日:有給消化中に別の会社へ入社すると二重就労になります。就業規則で副業が禁止されている会社では、退職日の翌日以降を入社日にするのが基本です
- ボーナスの支給日:賞与は「支給日に在籍していること」を条件にする会社が多いため、12月の支給日より前に退職日を設定すると受け取れない可能性があります
- 社会保険の資格喪失日:資格喪失日は退職日の翌日です。月末退職なら、その月の保険料まで会社の保険でカバーされます
- 住民税:退職月によって、最後の給与からまとめて天引きされるか、自分で納付に切り替わるかが変わります
有給消化中は、面接日程を平日に組みやすい貴重な期間でもあります。転職エージェントに入社可能日を伝えておけば、退職日に合わせて企業側とスケジュールを調整してもらえることもあります。
よくある質問
Q. 退職届に「有給休暇を消化して退職」と書く必要はありますか?
必要ありません。退職届には有給休暇の最終日を退職日として書き、有給休暇の取得は有給休暇届や勤怠システムで別に申請するのが一般的です。
Q. 有給消化中に退職届を出すことはできますか?
出せます。ただし、退職の申し出から退職日まで少なくとも2週間(就業規則でそれ以上の定めがあればその期間)を見込んでおきましょう。出社しない場合は郵送で提出する方法もあります。
Q. 有給休暇が残っていても、最終出社日を退職日にしたほうがよいですか?
早く次の会社に入社したいなどの理由があれば選べますが、残っている有給休暇は消えてしまいます。損をしたくなければ、有給の最終日を退職日にするのがおすすめです。
Q. 半日単位や時間単位の有給休暇も消化できますか?
会社が半日単位・時間単位の取得を認めていれば、その分も使えます。時間単位の有給休暇は労使協定で年5日分までと定められています。
Q. 有給消化中にボーナスはもらえますか?
有給消化中も在籍しているため、支給日に在籍していれば受け取れるのが一般的です。ただし支給条件は会社ごとに異なるため、賞与規程を確認しておきましょう。
Q. 退職日を月末にするか月の途中にするか迷っています。
月末退職なら資格喪失日が翌月1日となり、退職月の社会保険料は会社の保険で支払われます。月の途中で退職すると、その月は国民健康保険などへの切り替えが必要です。次の入社日とあわせて決めると無駄がありません。
有給休暇を使い切って、転職エージェントと次の職場へ
有給休暇を残さず退職するためのポイントは、退職届に書く日付を「有給休暇の最終日」にすることと、引き継ぎ計画をセットで示すことの2つです。残日数を確認し、申し出日・最終出社日・有給初日・退職日をカレンダーに落とし込めば、上司との話し合いも具体的に進められます。
有給消化の期間は、心と体を休めながら次の職場を探せる時間でもあるでしょう。入社日の調整や条件交渉に不安がある方は、在職中のうちに転職エージェントへ相談しておくと、退職日から逆算した無理のないスケジュールを組みやすくなります。

