退職届を手渡しする場面を想像すると、少し気が重くなる方もいるのではないでしょうか。上司と顔を合わせにくい、体調を崩して出社できない、すでに有給休暇の消化に入っていて会社に行く予定がない。こうした事情から退職届を郵送で出す人は珍しくありません。
ただ、郵送ならではのマナーや封筒の書き方を知らずに送ると「常識がない」と受け取られたり、届いた・届いていないの行き違いが起きたりします。ここでは、郵送用の封筒の選び方から表書き・裏書き、ボールペンで書いてよいか、送付状の文例、簡易書留と内容証明の使い分けまでを一つにまとめました。
この記事でわかること
- 退職届を郵送してよいケースと、送る前に済ませておきたい連絡
- 郵送用封筒のサイズ・色と「二重封筒」の作り方
- 封筒の表書き・裏書きの位置と、ボールペン・万年筆どちらで書くか
- 送付状(添え状)の文例と同封物チェック
- 簡易書留・特定記録・内容証明の料金と使い分け
退職届を郵送で出してよいケースと送る前の準備
退職の意思表示は口頭でも書面でも成立し、法律上「手渡しでなければ無効」という決まりはありません。民法627条では、期間の定めのない雇用契約なら申し入れから2週間で契約が終了すると定められており、郵送した退職届が会社に届いた日が「申し入れの日」として扱われるのが一般的です。
郵送が選ばれやすい4つの場面
- 体調不良やメンタル不調で出社が難しい
- すでに有給休暇の消化期間に入っている
- 上司が退職届を受け取ってくれない、話し合いが進まない
- 遠方の支店勤務や在宅勤務で、本社の人事部へ直接届けにくい
送る前に電話かメールで一報を入れる
いきなり封筒だけが届くと、受け取った側は驚きます。可能であれば、直属の上司か人事担当者へ「退職届を本日郵送しました」と電話やメールで伝えておくと、受け取りがスムーズになります。就業規則に「退職の申し出は1か月前まで」などの定めがある会社も多いため、手元の規則で提出先と期限を確認しておきましょう。
連絡そのものが難しいほど関係がこじれている場合は、無理に電話をせず、後述する内容証明郵便で記録を残す方法も選べます。
郵送用封筒の選び方 サイズ・色・二重封筒のマナー

退職届は会社に保管される正式な書類です。封筒もビジネス文書にふさわしいものを選ぶと、受け取る側の印象が大きく変わります。
封筒のサイズと色の目安
| 用途 | おすすめサイズ | 色 | 入れ方 |
|---|---|---|---|
| 内封筒(退職届を直接入れる) | 長形4号(90×205mm) | 白・無地 | B5用紙を三つ折り |
| 内封筒(A4で作成した場合) | 長形3号(120×235mm) | 白・無地 | A4用紙を三つ折り |
| 外封筒(郵送用) | 角形5号〜角形4号、または長形3号 | 白(茶封筒でも可) | 内封筒と送付状を折らずに入れる |
内封筒は中身が透けにくい二重仕立ての白封筒が基本です。郵便番号の枠が印刷されていない無地を選ぶと、ビジネス文書らしい見た目になります。100円ショップや文具店で、5〜10枚入りで100〜300円ほどが相場です。
なぜ「二重封筒」にするのか
郵送する場合は、退職届を入れた内封筒を、さらに外封筒に入れて送る形が丁寧とされています。外封筒は郵便物として汚れたり折れたりする役目を引き受け、会社に届いたあとは外封筒を開けて内封筒をそのまま上司や人事に回せるためです。内封筒をそのまま切手を貼って送ると、宛名や切手で「退職届」の表書きがふさがってしまうでしょう。
封筒の表書き・裏書きの書き方 ボールペンと万年筆どちらがよいか

封筒の書き方は内封筒と外封筒で役割が異なります。混同しやすいところなので、内封筒と外封筒に分けて確認しておきましょう。
内封筒の表書き・裏書き
- 表面:中央にやや大きめの字で「退職届」と縦書き。宛名や住所は書きません
- 裏面:左下に所属部署と氏名を縦書き。部署名は氏名より少し小さく、右側に添えます
- 封:のりで閉じたうえで、封じ目に「〆」を書くと丁寧です(市販のシールは使わないほうが無難)
外封筒の表書き・裏書き
- 表面:右側に会社の郵便番号と住所、中央に「株式会社〇〇 人事部 〇〇様」または「〇〇部長 〇〇様」。左下に赤字で「親展」と書くと、本人以外が開封しにくくなります
- 裏面:左側に自分の郵便番号・住所・氏名。投函日を左上に書いておくと、いつ出したかが一目でわかります
会社名は「(株)」と略さず「株式会社」と正式に書きます。個人宛てなら「様」、部署宛てなら「御中」で、「〇〇部御中 〇〇様」のように両方を重ねるのは誤りとされています。
ボールペン・万年筆・サインペンの選び方
退職届も封筒も、黒のボールペンか万年筆で書くのが一般的です。消えるボールペン(フリクションなど)は熱で文字が消える可能性があるため、正式書類には向きません。鉛筆やシャープペンシルも同様の理由で避けましょう。
| 筆記具 | 向いている場所 | 注意点 |
|---|---|---|
| 油性ボールペン(0.5〜0.7mm) | 本文・内封筒の裏書き | にじみにくく、郵送中の水濡れにも比較的強い |
| 万年筆(黒インク) | 本文・「退職届」の表書き | 水濡れでにじみやすいので外封筒には不向き |
| 水性サインペン(中字) | 外封筒の宛名 | 太く読みやすいが、雨の日はにじむことがある |
| 消えるボールペン・鉛筆 | 使わない | 改ざんや消失のおそれがあり正式書類に不適 |
宛名を書き損じた場合は、修正テープを使わず新しい封筒に書き直します。退職届本文の書き損じも同じで、二重線と訂正印で直すよりも書き直したほうがきれいに仕上がるはずです。
送付状(添え状)の書き方と同封物チェックリスト

郵送では、何が入っているかを説明する送付状を1枚添えるのがビジネスマナーとされています。A4の白い用紙にパソコンで作成して構いません。
送付状の文例
次の文例は、社名や日付を差し替えればそのまま使える形です。
|
令和8年11月〇日 株式会社〇〇 人事部 〇〇様 営業部 〇〇〇〇 退職届送付のご連絡 拝啓 晩秋の候、貴社ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。 記 |
時候の挨拶は季節に合わせて変えます。11月なら「晩秋の候」、12月なら「師走の候」などがよく使われる表現です。
同封物チェックリスト
- 退職届(内封筒に入れて封をしたもの)
- 送付状
- 健康保険被保険者証(退職日以降に返却する会社もあるため事前に確認)
- 社員証・入館証など、郵送で返却を求められている貸与物
- 源泉徴収票や離職票の送付先を書いたメモ(引っ越し予定がある場合)
社員証や鍵などの貸与物は、退職届とは別便で送るよう指示されることもあります。人事担当者に確認しておくと二度手間を防げます。
郵送方法の比較 簡易書留・特定記録・内容証明の使い分け
退職届は「確かに届いた」ことを後から示せる方法で送るのが安心です。普通郵便はポスト投函で終わってしまい、届いた記録が残りません。料金は2026年11月時点、定形郵便(50g以内)の基本料金110円を前提にした目安です。
| 送り方 | 合計料金の目安 | 記録されること | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 普通郵便 | 110円 | なし | 手渡し済みで控えを送るだけの場合 |
| 特定記録 | 110円+210円=320円 | 引き受けとポスト配達の記録 | 円満退職で、届いたことだけ確認したい |
| 簡易書留 | 110円+350円=460円 | 引き受けと対面での受け渡し、5万円までの補償 | 多くの人が選ぶ標準的な送り方 |
| 内容証明+配達証明 | 1,500円前後(枚数で変動) | いつ・誰が・どんな文面を送ったか、配達日 | 受け取りを拒まれている、退職日でもめている |
簡易書留は郵便局の窓口で差し出し、受け取った控え(受領証)に記載された番号で配達状況を追跡できます。会社の総務が受け取った時点で記録が残るため、迷ったら簡易書留を選べば大きな失敗はないでしょう。
内容証明郵便を使うときの注意
内容証明は、同じ文面を3通(会社用・郵便局保管用・自分用)用意し、1行の字数などの決まりに沿って作成しなければなりません。e内容証明(電子内容証明)を使えば、Wordで作った文書をオンラインで差し出すこともできます。ただし、会社によっては「内容証明が届いた」こと自体を対立的に受け取る場合もあるため、話し合いで解決できそうなら簡易書留で十分なケースが多いと考えられます。
郵送で起こりがちな失敗と知っておきたい注意点
郵送ならではのつまずきは、送る前に知っておくだけで防げるものがほとんどでしょう。
- 宛先を社長宛てにしてしまう:退職届の宛名は代表取締役ですが、外封筒の送り先は直属の上司か人事部が一般的です。社長室に直接届くと社内で回付に時間がかかります
- 退職日を書き忘れる:郵送では口頭で補足できないため、退職届の本文に「令和8年12月31日をもって退職いたします」と日付を明記します
- コピーを残さない:送る前に退職届と送付状をスマホで撮影するかコピーしておくと、後で内容を確認するときに役立ちます
- 届いた日を計算に入れない:退職の申し入れ日は「投函日」ではなく「会社に届いた日」と考えるのが安全です。土日をはさむと2〜3日かかることもあります
- 切手の料金不足:二重封筒に送付状や保険証を入れると50gを超えることがあります。窓口で重さを測ってもらうと確実です
実際に、月末退職を狙って金曜の夕方に投函し、会社に届いたのが翌週火曜だったため、2週間の計算が1日ずれてしまったという声もあります。退職日から逆算して、余裕を持って差し出しましょう。
よくある質問
Q. 退職届を郵送したら会社に失礼になりますか?
事前に電話やメールで「郵送で提出します」と伝え、送付状を添えていれば、失礼と受け取られることは少ないでしょう。体調不良や有給消化中など、郵送を選ぶ理由がある場合は一言添えると誤解を防げます。
Q. 封筒の表書きはボールペンで書いても大丈夫ですか?
黒の油性ボールペンで問題ありません。万年筆やサインペンでも構いませんが、消えるボールペンや鉛筆は正式書類に向かないため避けましょう。
Q. 茶封筒で送ってもいいですか?
外封筒(郵送用)は茶封筒でも差し支えありません。ただし、退職届を直接入れる内封筒は白の無地を使うのが一般的です。
Q. 簡易書留と特定記録はどちらがよいですか?
受け取りの記録が対面で残り、補償も付く簡易書留のほうが安心です。特定記録は郵便受けへの配達となるため、「受け取った人」までは記録されません。
Q. 退職届は誰宛てに郵送すればいいですか?
退職届本文の宛名は代表取締役名にし、外封筒の送り先は直属の上司か人事部の担当者にするのが一般的です。就業規則に提出先が書かれていれば、それに従います。
Q. 郵送した退職届を会社が受け取らなかった場合は?
受け取り拒否で返送された場合は、内容証明郵便に配達証明を付けて送り直す方法があります。それでも話が進まないときは、各都道府県の労働局にある総合労働相談コーナーに相談できます(相談は無料)。
封筒を送ったら、転職エージェントと次のキャリア準備へ
退職届の郵送は、白の二重封筒に「退職届」と表書きし、送付状を添えて簡易書留で送るのが基本形です。退職日を本文に明記し、控えを残しておけば、郵送でも手渡しと同じように手続きを進められます。
投函が終われば、残っているのは離職票や源泉徴収票の受け取り、健康保険の切り替え、そして次の職場探しです。在職中から転職エージェントに相談しておくと、退職日に合わせて入社日を調整してもらえることもあります。封筒を出した日を区切りに、次の一歩の準備を始めてみてください。

