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退職代行の非弁行為とは 違法ライン・労働組合型との違い・モームリ判決・訴えられるリスクなど

退職代行の非弁行為とはのイメージ 退職代行

2026年8月28日、東京地裁は退職代行「モームリ」の運営会社と前社長に有罪判決を言い渡しました。法人に罰金200万円、前社長に懲役2年・執行猶予3年という内容です。このニュースをきっかけに「自分が使おうとしている退職代行は違法じゃないのか」「使ったら自分も罪に問われるのか」と不安を感じた方は少なくないはずです。

結論を先にお伝えすると、利用者が非弁行為で処罰されることはありません。問題になるのは業者側の行為です。ただし、違法なラインを踏み越えた業者に依頼すると、会社に取り合ってもらえず退職が長引くなど、実害を受けるのは利用者です。

この記事でわかること

  • 退職代行の「非弁行為」が具体的にどこから違法になるのか
  • 民間型・労働組合型・弁護士型でできることの違い(○×クロス表)
  • モームリ事件の経緯と、判決が利用者に与える影響
  • 会社から訴えられる・損害賠償を請求されるリスクの実態
  • 違法業者を避けるためのチェックポイント7つ
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退職代行の非弁行為とは?弁護士法72条が禁じている範囲

非弁行為とは、弁護士資格を持たない人が報酬を得る目的で、法律事件について代理や交渉などの法律事務を業として行うことを指します。根拠は弁護士法72条で、違反すると2年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象になります。

退職代行で問題になるのは「退職の意思を伝える」行為そのものではありません。本人の意思をそのまま会社に届けるだけの「使者」としての連絡は、一般に違法ではないと考えられています。線引きのポイントは「交渉」をしているかどうかです。

違法になりやすい行為の具体例

  • 有給休暇の消化日数について会社と話し合い、調整する
  • 未払いの残業代や退職金の支払いを請求・交渉する
  • 退職日を「2週間後ではなく即日にしてほしい」と条件交渉する
  • 会社からの損害賠償の主張に対して反論・示談交渉する
  • 報酬を得て利用者を弁護士に紹介し、紹介料を受け取る

最後の「紹介料」は見落とされがちですが、弁護士法72条は他人の法律事件を周旋(あっせん)して報酬を得ることも禁じています。モームリ事件で問われたのは、まさにこの部分でした。

「退職の意思を伝えるだけ」なら合法とされる理由

民法627条により、期間の定めのない雇用契約は退職の申し入れから2週間で終了します。会社の同意は法律上必要ありません。つまり「辞めます」と伝えること自体には交渉の余地がなく、本人の言葉をそのまま届ける限り法律事務にあたらないという整理です。

ところが実際の現場では、会社側が「引き継ぎが終わるまで辞めさせない」「有給は使わせない」と返してくるケースが少なくありません。この瞬間、民間業者は「会社がそうおっしゃっています」と本人に伝えることしかできなくなります。ここで食い下がって条件を引き出そうとすれば、非弁行為の領域に足を踏み入れることになるでしょう。

民間型・労働組合型・弁護士型の違いを○×クロス表で比較

退職代行の非弁行為とは 民間型・労働組合型・弁護士型の違いを○×クロス表で比較のイメージ
Photo by Pavel Danilyuk on Pexels

退職代行は運営主体によって3タイプに分かれ、法的にできる範囲がまったく異なります。料金だけで選ぶと、いざ会社がゴネたときに何もできない業者を選んでしまうかもしれません。

できること 民間型 労働組合型 弁護士型
退職の意思を伝える ○ ○ ○
有給消化・退職日の交渉 × ○(団体交渉) ○
未払い残業代・退職金の請求 × △(交渉は可・訴訟は不可) ○
損害賠償請求への対応 × × ○
訴訟・労働審判の代理 × × ○
料金の目安 1万〜3万円 2万〜3万円 2万〜5万円+成功報酬

※料金は2026年10月時点で公式サイトに掲載されている主要サービスの価格帯をもとにした目安です。成功報酬は回収額の20〜30%前後に設定している事務所が多く見られます。

労働組合型が交渉できる根拠

労働組合には憲法28条と労働組合法で団体交渉権が保障されています。利用者が組合に加入し、組合として会社と交渉する形をとるため、有給消化や退職日の調整について話し合えるという仕組みです。会社は正当な理由なく団体交渉を拒否できません。

注意したいのは、組合の実態があるかどうかです。組合の規約・役員・所在地が公開されているか、組合としての活動実績が説明されているかを確認すると安心です。名前だけ「ユニオン」と付けて実態は民間業者という形態は、裁判で争われた場合に組合性を否定されるおそれがあります。

弁護士型が向いている人

弁護士型は唯一、訴訟まで含めて全面的に代理できる存在です。料金はやや高くなりますが、次のどれかに当てはまる場合は弁護士型を最初から選ぶほうが結果的に安く済むことがあります。

  • 未払い残業代が数十万円以上ありそう
  • 会社から「辞めたら損害賠償を請求する」と言われている
  • ハラスメントがあり、慰謝料も視野に入れている
  • 公務員(労働組合型の団体交渉が使えないケースが多い)

弁護士型の費用相場や失敗例は退職代行弁護士の完全ガイドで詳しく整理しました。

モームリ事件の経緯と判決のポイント

退職代行の非弁行為とは モームリ事件の経緯と判決のポイントのイメージ
Photo by khezez | خزاز on Pexels

業界最大手とされていたモームリで何が起きたのかを、時系列で確認しておきます。

時期 出来事
2025年10月22日 警視庁が運営会社アルバトロスを家宅捜索
2026年2月3日 前社長と従業員の妻を弁護士法違反の疑いで逮捕
2026年4月1日 新代表取締役に浜田優花氏が就任
2026年4月23日 新規受付の再開を発表
2026年8月28日 東京地裁が法人に罰金200万円、前社長に懲役2年・執行猶予3年の判決

報道によると、交渉が必要になった利用者計174人を提携弁護士に紹介し、その見返りに報酬を受け取っていたことが問題視されました。業者自身が交渉したのではなく、「紹介して紹介料を得た」行為が周旋にあたると判断された点が大きな特徴です。

判決後、運営会社は「紹介料の受領に関する判決であり、サービスそのものの是非を判断したものではない」という趣旨のコメントを出し、サービスを継続しています。モームリ自体の料金や現在の受付状況は退職代行モームリ完全ガイドにまとめています。

判決が業界に与えた影響

東京商工リサーチが2026年4月に実施した調査では、弁護士や労働組合以外の退職代行から連絡があった場合に「取り合わない」と回答した企業が30.4%にのぼりました。約3社に1社が民間型を窓口として認めない姿勢を示しているということです。

同社の集計では、営業項目に「退職代行」を掲げる企業(弁護士法人を除く)は2026年5月時点で56社あり、すべて設立10年未満、うち32社が2025年設立でした。参入が急増した業界だけに、品質のばらつきが大きいと考えておくほうが無難です。

利用者が訴えられる・損害賠償を請求されるリスクは?

退職代行の非弁行為とは 利用者が訴えられる・損害賠償を請求されるリスクは?のイメージ
Photo by El Jundi on Pexels

「退職代行を使ったら会社に訴えられた」という話を見かけることがありますが、実際に訴訟まで進むケースはごくまれと言われています。理由はシンプルで、退職そのものは労働者の権利であり、退職を理由に損害賠償を認めさせるのは会社側にとってハードルが高いからです。

請求が認められる可能性があるケース

  • 有期雇用契約の途中で、やむを得ない理由なく一方的に辞めた
  • 重要なプロジェクトの責任者が無断で業務を放棄し、具体的な損害が出た
  • 会社の備品やデータを返却せず持ち出した

こうした場面でも、会社は「退職と損害の因果関係」と「損害額」を立証しなければなりません。逆に言えば、貸与品をきちんと返却し、引き継ぎメモを残しておくだけでリスクの大半は避けられます。

民間型を使って「退職できなかった」場合の実害

非弁行為で処罰されるのは業者ですが、利用者にも実害が出ることがあります。会社が「本人か弁護士からでないと受け付けない」と対応を拒否すれば、民間型はそれ以上動けません。結果として、退職日が決まらない、有給が消化できない、離職票の発行が遅れるといった事態が起こります。追加料金を払って弁護士に依頼し直す二度手間も、実際によく聞くパターンです。

違法業者を避けるチェックポイント7つ

申し込み前に、公式サイトと問い合わせで次の7点を確認してください。3つ以上あいまいな回答が返ってくる業者は避けるのが賢明です。

  1. 運営主体の明記:会社名・組合名・法律事務所名と所在地が書かれているか
  2. 「交渉」の表現:民間型なのに「有給交渉OK」「未払い給与も請求」とうたっていないか
  3. 労働組合の実態:規約・役員・所在地が公開されているか
  4. 弁護士紹介の仕組み:提携弁護士を紹介する際に業者が紹介料を受け取っていないか
  5. 返金保証の条件:「退職できなければ全額返金」の条件が具体的に書かれているか
  6. 追加料金:深夜・即日・書類送付などのオプションが後から加算されないか
  7. 監修表示:「弁護士監修」が実際の業務関与なのか、サイト記事の監修だけなのか

特に4番目は、モームリ事件以降に最も注目されている論点です。「無料で弁護士を紹介します」という言い方自体は問題ありませんが、その裏で業者が報酬を得ていれば周旋にあたる可能性があります。気になる場合は「紹介にあたって御社に費用は発生していますか」と直接聞いてみるのが確実です。

タイプ別の選び方の目安

あなたの状況 おすすめのタイプ
有給は残っていない・会社とのトラブルもない 労働組合型(民間型との価格差が数千円程度のため)
有給を全部消化したい・退職日を調整したい 労働組合型
未払い残業代・ハラスメント・損害賠償の不安がある 弁護士型
公務員 弁護士型

2026年時点では、労働組合型と民間型の料金差は数千円程度まで縮まっています。会社に取り合ってもらえないリスクを考えると、最低でも労働組合型を選ぶのが現実的な判断です。

退職後の転職活動で後悔しないための準備

退職代行を使う人の多くは、心身がかなり消耗した状態で決断しています。退職できた瞬間に気が抜けてしまい、次の仕事探しが数か月止まってしまうことも珍しくありません。退職手続きと並行して、次の3つだけは進めておくと再スタートが楽になります。

  • 離職票・源泉徴収票の受け取り先を指定:郵送先を退職代行経由で会社に伝えておく
  • 失業保険の手続き時期を確認:2025年4月の法改正で自己都合退職の給付制限は原則1か月に短縮されています
  • 転職エージェントへの登録:在職中に登録しておくと、退職直後から求人紹介を受けられます

面接で退職理由を聞かれたときに退職代行の利用を自分から話す必要はありません。「前職では◯◯が難しく、△△ができる環境で働きたいと考えました」と、次の職場で実現したいことに軸を置いて話すと前向きな印象になります。

よくある質問

Q. 非弁行為をしている業者を使ったら、利用者も罪に問われますか?

A. 問われません。弁護士法72条の処罰対象は、報酬を得て法律事務を扱った業者側です。ただし会社に対応を拒否されるなど、退職手続きが滞る実害は利用者が受けます。

Q. モームリは今も利用できますか?

A. 2026年4月23日に新規受付を再開しており、10月時点でもサービスは継続しています。判決は紹介料の受領に関するもので、退職の意思を伝える業務そのものが違法と判断されたわけではありません。

Q. 労働組合型ならどこでも安全ですか?

A. 組合としての実態があることが前提です。規約・役員・所在地の公開状況を確認し、不明な点が多い場合は避けたほうがよいでしょう。

Q. 退職代行を使うと会社から損害賠償を請求されますか?

A. 退職そのものを理由に賠償が認められることはまれです。有期契約の途中解約や貸与品の未返却など、具体的な損害がある場合に限られると考えられます。

Q. 「弁護士監修」と書かれた民間業者なら交渉もできますか?

A. できません。監修は記事や業務フローのチェックを指すことが多く、弁護士が代理人として会社と交渉するわけではありません。交渉が必要なら弁護士型か労働組合型を選んでください。

Q. 退職代行を使ったことは転職先に知られますか?

A. 前職の会社が転職先に伝えることは個人情報保護の観点から通常ありません。面接で自分から話す必要もありません。

安全な退職代行を選んで次のキャリアに進もう

非弁行為の線引きは「交渉するかどうか」と「紹介料を受け取るかどうか」の2点に集約されます。利用者が処罰されることはありませんが、業者選びを誤ると退職が長引き、結局二重に費用がかかることもあります。

まずは自分の状況をクロス表に当てはめ、有給消化だけなら労働組合型、お金のトラブルが絡むなら弁護士型と決めてください。そのうえで申し込み前にチェックポイント7つを確認し、並行して転職エージェントに登録しておけば、退職から次の職場までの空白期間を最小限にできます。




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