複数の選考が同時に進み、第一志望ではない企業から先に内定が出た。担当のキャリアアドバイザーには何度も面談でお世話になったし、断りの電話を入れるのは正直気が重い。転職エージェントを使っている人の多くが、一度はこの場面で手が止まります。
結論から書くと、エージェント経由の内定辞退は珍しいことではなく、伝え方さえ押さえれば関係を壊さずに断れます。中途採用の現場では、エージェント経由で出た内定のうち2割前後〜4割程度が辞退されるというデータもあり、担当者側も辞退を前提に複数の候補者を動かしているのが実情です。
この記事でわかること:
- 内定辞退・面接辞退を伝えるベストなタイミングと連絡手段
- 電話・メール・LINE別にそのまま使える例文
- 引き止めがしつこいときの具体的な返し方
- 内定承諾後に辞退する場合のリスクと最低限のマナー
転職エージェント経由の内定辞退はどれくらい起きているのか
新卒採用では「内定辞退率6割超」といった数字が話題になりますが、中途採用でも辞退は日常的に起きています。エン・ジャパンの人事向けメディア「人事のミカタ」の調査では、転職活動で内定辞退を経験した人は55%と半数を超えました。エージェント経由の内定に限ると、承諾前の辞退は2〜5割と調査によって幅があるものの、少なくとも「辞退する人は少数派」という状況ではありません。
理由は単純で、エージェントは1人の求職者に平均10〜20社程度の求人を紹介し、並行して選考を進めるよう勧めるからです。複数の内定が重なれば、どこかを断るのは構造上避けられません。担当者もそれを理解しているため、辞退そのものを責められる心配はまずないでしょう。
エージェントが本当に困るのは「辞退」ではなく「連絡の遅れ」
キャリアアドバイザーの評価は、紹介した人材が入社して初めて成果報酬(一般的に想定年収の30〜35%)が発生する仕組みになっています。辞退そのものは想定内ですが、返事を先延ばしにされると企業側の採用計画が止まり、次点の候補者にも声をかけられません。迷っている段階でも「〇日までにお返事します」と期限を伝えておくだけで、担当者の印象は大きく変わります。
辞退しても次の求人紹介は受けられるのか
辞退後に「もう求人を紹介してもらえないのでは」と心配する声は多いものの、理由をきちんと伝えていれば紹介が止まるケースは多くありません。むしろ「年収よりも勤務地を優先したい」など判断軸がはっきりしたことで、次の紹介精度が上がることもあります。連絡を無視して音信不通になった場合は話が別で、社内の対応メモに残り、優先度が下がる可能性は否定できません。
辞退を伝えるタイミングと連絡手段の選び方

内定の回答期限は、通知から1週間前後に設定されるのが一般的です。辞退を決めたら、期限ギリギリではなく決めた当日か翌営業日に連絡を入れるのが基本になります。
| 連絡手段 | 向いている場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 電話 | 内定辞退・承諾後の辞退など重い連絡 | 平日10〜18時、昼休みの12〜13時は避ける |
| メール | 電話がつながらなかった後の補足、面接辞退 | 件名に「内定辞退のご連絡(氏名)」と明記 |
| LINE・チャット | 普段からLINEでやり取りしているエージェント | スタンプや絵文字は使わず、要件を1通にまとめる |
| マイページの辞退ボタン | 書類選考段階の辞退 | 面接日程確定後はボタンだけで済ませない |
実際にエージェントを使った人の体験談では、「電話で伝えたら3分で終わった」「LINEで送ったらその日のうちに了承の返信が来た」という声が目立ちます。身構えていたほど大ごとにはならないケースがほとんどです。
企業に直接連絡するのはNG
エージェント経由の選考では、応募先企業とのやり取りはすべて担当者が窓口になります。気まずさから企業の人事に直接メールを送ってしまうと、エージェントと企業の間で情報が食い違い、かえって混乱を招きます。辞退の連絡先は必ず担当のキャリアアドバイザーと覚えておきましょう。
そのまま使える内定辞退の例文(電話・メール・LINE)

辞退理由は詳しく書く必要はありません。ただし「一身上の都合」だけだと、担当者が企業に説明する材料がなくなります。差し支えない範囲で1文だけ理由を添えるのが、双方にとって負担の少ない伝え方です。
電話で伝える場合のトーク例
「お世話になっております、〇〇です。先日内定をいただいた株式会社△△様の件でお電話しました。大変ありがたいお話でしたが、慎重に検討した結果、このたびは辞退させていただきたいと考えています。勤務地の条件を優先し、別の企業に入社を決めました。ご尽力いただいたのに申し訳ありません。」
話す順番は「名乗り→要件→結論→理由→お詫び」の5ステップです。結論を最初に言うと、相手も聞き返す必要がなく短時間で終わります。
メールで伝える場合の例文
件名:内定辞退のご連絡(氏名)
〇〇様
いつも大変お世話になっております。〇〇です。
先日内定のご連絡をいただきました株式会社△△様の件について、熟考の末、辞退させていただく決断をいたしました。
年収面よりも通勤時間を重視したいと考え、別の企業からの内定をお受けすることにしました。
選考の調整から面接対策まで手厚くサポートいただいたにもかかわらず、このようなご連絡となり申し訳ございません。
△△様にもくれぐれもよろしくお伝えいただけますと幸いです。
LINEで伝える場合の例文
「〇〇さん、お疲れさまです。△△社の内定の件、検討した結果、辞退させていただきたく、ご連絡しました。家族と相談し、転勤のない会社を優先することにしました。ここまでご調整いただいたのに申し訳ありません。もし必要であれば、お電話でもご説明します。」
LINEは気軽なぶん文面が短くなりがちです。最後に「電話でも説明します」と一言添えると、軽く扱っている印象を避けられます。
理由別に言い換えるときのフレーズ集
- 他社に決めた:「業務内容を比較した結果、別の企業へ入社することに決めました」
- 年収・条件:「提示いただいた条件と、生活面で必要な水準に差がありました」
- 現職に残る:「現職で新しいポジションの打診があり、残留を選びました」
- 家庭の事情:「家族の事情で、当面は勤務地を変えられなくなりました」
面接辞退・選考辞退をスムーズに伝えるコツ

内定前の段階でも、「この会社は違う」と感じたら早めに選考を降りたほうが、企業にもエージェントにも親切です。面接辞退は内定辞退より心理的なハードルが低いぶん、連絡を後回しにしてしまう人が少なくありません。
面接日程が決まった後の辞退は前日までに
面接官は日程に合わせて会議室や同席者を押さえています。面接の前日17時までを目安に連絡すれば、企業側の調整も間に合います。当日キャンセルはエージェントの信用にも関わるため、体調不良などやむを得ない場合を除き避けたいところです。
面接辞退メールの例文
「〇〇様 お世話になっております。〇〇です。〇月〇日に予定しております株式会社△△様の二次面接について、大変恐縮ながら辞退させていただきたくご連絡しました。他社の選考が先に進み、そちらに集中したいと考えております。日程調整までしていただいたのに申し訳ありません。」
辞退のつもりが「保留」に変わる人も
辞退を伝えたあとで、担当者から「実は年収交渉の余地があります」と打診されることもあります。条件次第で気持ちが変わるなら、それを正直に伝えて構いません。ただし交渉材料として辞退をちらつかせるのは、企業側の心証を悪くするのでおすすめしません。
引き止めがしつこいときの対処法
多くのエージェントは辞退をすんなり受け入れますが、なかには「もう一度考え直しませんか」「企業はとても期待しています」と粘る担当者もいます。成果報酬型のビジネスである以上、ある程度の引き止めは避けられません。
しつこい引き止めへの3つの返し方
- 決定事項として伝える:「検討中」ではなく「辞退を決めました」と過去形で言い切ります
- 理由を1つに絞る:理由を複数挙げると、1つずつ反論される余地が生まれます
- 次の連絡手段を指定する:「以降の連絡はメールでお願いします」と伝えると、電話攻勢が落ち着く傾向があります
それでも収まらない場合は担当変更か窓口へ
大手エージェントの多くは、公式サイトに担当者変更やサポート窓口のフォームを設けています。担当者個人とのやり取りで消耗するより、運営会社の窓口に「担当変更を希望」と送るほうが早く解決します。合わない担当者に見切りをつけ、別のエージェントへ切り替える選択肢も持っておくと気持ちが楽になるでしょう。
内定承諾後の辞退は法的には可能、ただし慎重に
期間の定めのない雇用契約は、民法627条により申し入れから2週間で解約できると定められています。つまり承諾後の辞退も法律上は認められていますが、企業はすでに他の候補者を断り、入社準備を進めている段階です。承諾後の辞退は必ず電話で、できるだけ早く伝えるのが最低限の礼儀でしょう。損害賠償を請求される例は極めてまれとされますが、入社直前の辞退や、備品・研修費が発生している場合はトラブルになりやすいので注意が必要です。
転職エージェントの内定辞退でよくある質問
Q1. 内定辞退の理由は正直に言わないといけませんか?
すべてを話す義務はありません。ただ「他社に決めた」「条件が合わない」程度の一言は伝えたほうが、担当者が企業へ説明しやすくなります。
Q2. 回答期限を延ばしてもらうことはできますか?
他社の結果待ちなど正当な理由があれば、3日〜1週間程度の延長に応じてもらえる場合があります。延長の交渉もエージェント経由で行うのが基本です。
Q3. 内定辞退するとエージェントのブラックリストに載りますか?
通常の辞退で紹介を打ち切られることはまずありません。問題になるのは、連絡なしの面接欠席や、承諾後の無断辞退が繰り返された場合です。
Q4. 辞退した企業に、後から応募し直すことはできますか?
可能ですが、同じエージェント経由だと企業の記録が残っているため、半年〜1年程度は期間を空けるのが無難です。
Q5. 内定辞退の連絡は土日でも大丈夫ですか?
メールやLINEなら土日に送っても問題ありません。返信は翌営業日になることが多いので、急ぐ場合は月曜の午前中に電話で補足しましょう。
Q6. 複数のエージェントから同じ企業に応募してしまった場合は?
重複応募は企業とエージェント双方の混乱を招くため、気づいた時点で両方の担当者に正直に連絡します。一般的には先に推薦したエージェント経由の選考が優先されます。
気持ちよく次の選考へ進むために
内定辞退は、転職活動を真剣に進めた結果として誰にでも起きることです。押さえるべきポイントは、決めたら早く、窓口は担当者、理由は一言の3つだけ。連絡を後回しにするほど気まずさは増していくので、この記事の例文をベースに今日中に一報を入れてしまいましょう。
辞退を通じて「自分が何を優先したいのか」がはっきりしたなら、それは次の求人選びに必ず活きてきます。担当者との相性に不安がある場合は、別のエージェントにも登録しておくと、比較しながら納得のいく1社を選べるはずです。

