連絡帳を書き終えて時計を見ると20時過ぎ。持ち帰った壁面制作の材料を前に「このまま保育士を続けていいのかな」と手が止まります。そんな夜を何度か過ごした人は少なくありません。東京都の保育士実態調査では、退職を考えている保育士の61.6%が「給料が安い」、54.0%が「仕事量が多い」を理由に挙げています。
一方で、保育の現場で身につけた観察力・保護者対応力・段取り力は、異業種でも評価されやすいスキルです。ここでは保育士から転職を考えている人に向けて、判断材料になる数字から職種選び、書類での言い換え方まで順番に整理しました。
この記事でわかること
- 保育士の年収と2026年度の処遇改善の見通し
- 辞めたい理由別の「転職すべきか・園を変えるべきか」の判断基準
- 保育士から転職しやすい異業種のおすすめ職種7つと年収目安
- 保育の経験を職務経歴書・面接で伝える言い換え例
- 保育士からの転職で使う転職サイト・エージェントの選び方
保育士から転職する前に押さえたい5つの数字
勢いで退職届を出す前に、まず今の待遇が世の中の水準と比べてどうなのかを確認しておくと判断がぶれにくくなります。
| 項目 | 数字 | 出典・補足 |
|---|---|---|
| 保育士の平均年収 | 約427.6万円(月給約28.6万円+賞与約84.8万円) | 令和7年賃金構造基本統計調査をもとにした集計 |
| 20〜24歳の平均年収 | 約350.4万円 | 45〜49歳の約475.9万円がピーク |
| 公定価格の人件費改善 | 2025年度に10.7%、2026年度に5.3% | 2026年度は年額で約20万円の改善が目安とされています |
| 保育士登録者のうち保育現場で働いていない人 | 約111万人 | 登録者約179万人・従事者約68万人(令和6年10月時点) |
| 退職を考える理由「給料が安い」 | 61.6% | 東京都保育士実態調査(就業中の保育士) |
注目したいのは処遇改善の流れです。2025年度・2026年度と2年続けて人件費の引き上げが続いているため、「給料だけ」が不満なら、待遇を見える化している園への移籍で解決する可能性もあります。反対に、仕事内容そのものや働き方を変えたい場合は、異業種への転職を本格的に検討するタイミングと言えそうです。
保育士資格を持ちながら保育現場以外で働いている人が約111万人いるという数字も、保育士から転職すること自体が珍しい選択ではないことを物語っているのではないでしょうか。
保育士を辞めたい理由別に見る転職の判断基準

同じ「辞めたい」でも、理由によって取るべき行動は変わります。東京都の調査では、実際に保育士を辞めた人の理由は「職場の人間関係」が31.5%で最多、次いで「仕事量が多い」23.1%、「給料が安い」22.1%でした。
| 辞めたい理由 | おすすめの動き方 | 確認したいポイント |
|---|---|---|
| 職場の人間関係 | まずは別の園への転職を検討 | 職員数・平均勤続年数・離職者数 |
| 給料が安い | 処遇改善の反映状況を確認し、園移籍か異業種かを比較 | モデル賃金の公開有無・賞与月数 |
| 持ち帰り仕事・残業 | ICT化が進んだ園か、定時で終わる異業種 | 連絡帳アプリ・登降園システムの有無 |
| 体力的にきつい | デスクワーク中心の異業種 | 立ち仕事の比率・腰痛の有無 |
| 子どもと関わる仕事以外を試したい | 異業種への転職 | 未経験歓迎の求人と研修制度 |
現場の声としてよく聞かれるのは、「人間関係が理由で辞めたのに、次も同じ規模の園を選んでまた同じ悩みを抱えた」という失敗談です。理由が職場固有のものか、保育士という仕事そのものにあるのかを一度紙に書き出して切り分けると、次の選択で後悔しにくくなります。
保育士から転職しやすい異業種のおすすめ職種7選

保育士の経験が評価されやすく、未経験からでも採用実績が多い職種を選びました。年収は求人票でよく見かけるレンジの目安です。
| 職種 | 年収の目安 | 活きる保育士スキル | 未経験の入りやすさ |
|---|---|---|---|
| 一般事務・営業事務 | 280〜380万円 | 書類作成・スケジュール管理 | ◎ |
| 子ども向け教育サービス | 300〜420万円 | 子どもへの声かけ・保護者対応 | ◎ |
| 人材業界のキャリアアドバイザー | 320〜500万円 | 傾聴力・相談対応 | ○ |
| 住宅・子育て関連商材の営業 | 350〜550万円 | 保護者目線の提案力 | ○ |
| 医療事務・歯科助手 | 250〜330万円 | 丁寧な受付対応 | ◎ |
| 子ども用品の販売・接客 | 260〜350万円 | 商品の安全性への理解 | ◎ |
| 保育・教育系企業の本部職 | 350〜480万円 | 現場経験そのもの | △ |
一般事務・営業事務
保育士から転職する人が最初に検討することの多い職種です。土日祝休み・定時退社の求人が多く、持ち帰り仕事から離れたい人に向いています。指導計画や日誌で鍛えた文章力、行事準備の段取り力はそのまま活かせます。WordとExcelの基本操作は入社前に身につけておくと選考で有利になりやすいでしょう。
子ども向け教育サービス(学習塾・英会話教室・知育教室)
子どもと関わる仕事は続けたいけれど、保育園の勤務形態から離れたい人に合う選択肢です。運営企業の正社員は教室運営や保護者面談も担当するため、保護者対応の経験が強みになります。夕方から夜の勤務が中心になる点は事前に確認しておきましょう。
人材業界のキャリアアドバイザー
求職者の話を聞いて希望を整理する仕事で、保育士の傾聴力と相手の変化に気づく観察力が評価されます。目標数字を追う営業的な側面もあるため、数字で評価される働き方に抵抗がないかを考えておくと、入社後のギャップを小さくできるでしょう。
住宅・子育て関連商材の営業
ハウスメーカーやベビー用品メーカーなど、子育て世帯を顧客とする企業では「保護者の気持ちがわかる」ことが武器になります。インセンティブがある会社では年収アップも狙えますが、土日出勤になる職場も多いため休日の条件は要確認です。
医療事務・歯科助手
小児科や歯科の受付では、泣いている子どもへの対応に慣れている保育士経験者が重宝されます。医療事務の民間資格は数か月の通信講座で取得を目指せるため、退職前から準備しやすい職種です。
子ども用品の販売・接客
ベビー用品店やおもちゃ売り場では、年齢に合った商品の提案ができる人材が求められます。立ち仕事が中心なので、体力面の負担を減らしたい人よりも、人と話すことが好きな人に向いています。
保育・教育系企業の本部職
保育園を運営する企業の採用担当・研修担当・エリアマネージャーなどです。現場経験そのものが評価される一方、募集数が少なく、主任経験や数年の勤続年数を求められることが多い点は覚えておきたいところ。
保育士の経験を職務経歴書・面接で伝える言い換え術

異業種の採用担当者は保育の現場を知らないことがほとんどです。「クラス担任をしていました」だけでは伝わらないため、ビジネスの言葉に置き換えて数字を添えます。
| 保育の現場での経験 | 異業種向けの言い換え例 |
|---|---|
| 2歳児クラス12名の担任 | 12名の成長記録を個別に管理し、月1回の計画見直しを実施 |
| 保護者対応・個人面談 | 約20世帯の保護者と面談を行い、要望の整理と改善提案を担当 |
| 運動会・発表会の企画 | 参加者約150名の行事で、進行表作成と職員6名の役割分担を担当 |
| 連絡帳・日誌の作成 | 毎日15件前後の報告文書を作成し、正確かつ簡潔な記録を継続 |
| 新人保育士の指導 | 後輩2名のOJTを担当し、業務マニュアルを作成 |
面接で退職理由を聞かれた場合は、「給料が安い」「人間関係がつらい」をそのまま伝えるより、「保護者対応で感じた相談業務のやりがいを、より専門的に深めたい」のように前向きな動機に置き換えると印象が良くなるはずです。職務経歴書全体の組み立て方は職務経歴書の書き方2026完全攻略でも詳しく整理しています。
保育士から転職するときの転職サイト・エージェントの選び方
保育士から異業種へ移る場合、保育士専門の求人サイトだけでは異業種の求人がほとんど見つかりません。目的に合わせて、次の3タイプを組み合わせるのが効率的です。
- 職種特化型エージェント:事務職など目指す職種が決まっている人向け。書類添削の精度が高い
- 働き方特化型エージェント:子育て中で時短勤務やリモートを希望する人向け
- 相談型・マッチング型サービス:まだ職種を決めきれていない人向け。複数のエージェントから自分に合う担当者を選べる
事務職を目指すならバックオフィス特化のBackup Career
一般事務・経理・人事などのバックオフィス職に絞った転職支援サービスで、面談はオンラインで完結します。保育士から事務職への転職を考えている人は、未経験から応募できる求人の傾向を最初に聞いておくと応募先を絞り込みやすくなります。
子育て中で時短正社員を希望するならリアルミーキャリア
育児と両立できる時短正社員の求人に特化した転職支援サービスです。自分の子どもの送迎時間に合わせた働き方を探している子育て中の保育士は、勤務時間の条件を最初に伝えて相談すると話が早く進みます。
エージェントの仕組みや無料で使える理由が気になる人は、転職エージェントとは?仕組み・無料の理由もあわせて読むと使い方のイメージがつかみやすいでしょう。
保育士からの転職でよくある失敗と後悔しないための対策
年度途中で辞めて引き継ぎが難航する
保育園は4月から3月の年度単位でクラスが動くため、年度途中の退職は職場との関係がこじれやすくなります。転職活動は秋ごろから始め、1〜2月に内定、3月末退職というスケジュールを組む人が多い傾向です。
月給だけを比べて年収が下がる
事務職は月給が同程度でも賞与が少ない求人があります。保育士の賞与は約84.8万円という集計もあるため、求人を比べるときは必ず「年収ベース」と「処遇改善手当の有無」を確認しましょう。
「子どもと関わらない仕事」が想像以上に物足りない
異業種に移ってから、子どもの成長を間近で見られるやりがいの大きさに気づく人もいます。迷う場合は、教育サービスや子ども用品の販売など「子どもに関わる異業種」を中間の選択肢として検討すると後悔が少なくなります。
資格を活かす道を完全に閉じてしまう
保育士資格は一度登録すれば更新の必要がありません。異業種に転職しても、将来パートや企業内保育で現場に戻る選択肢は残ります。保育士証は紛失しないよう保管しておきましょう。
迷ったときは転職AGENT Naviで方向性を相談する
希望条件を伝えると、条件に合う転職エージェントの担当者を紹介してくれる無料のマッチングサービスです。異業種のどの職種が向いているか迷っている段階でも、相談しながら方向性を固められます。
保育士からの転職についてよくある質問
Q. 保育士から未経験の異業種に転職できますか?
A. 可能です。20代〜30代前半であれば未経験歓迎の求人が多く、一般事務や教育サービス、販売職などで採用実績が豊富です。年齢が上がるほど、保育で培ったスキルを具体的な数字で示すことが大切になります。
Q. 保育士を辞めるベストな時期はいつですか?
A. 年度末の3月退職が最も円満に進みやすい時期です。就業規則で定められた申し出期限(1〜3か月前が一般的)を確認し、遅くとも年明けには園長に伝えておくとスムーズです。
Q. 保育士から事務職に転職すると年収は下がりますか?
A. 一般事務の年収目安は280〜380万円で、保育士の平均と比べると下がるケースもあります。ただし残業代が全額支給される職場や持ち帰り仕事がない職場では、時給換算で見ると条件が良くなることも珍しくありません。
Q. 保育士資格は異業種への転職で評価されますか?
A. 資格そのものより、資格を取るまでの学習経験と現場での実務経験が評価される傾向です。教育サービスや子育て関連企業では、資格保有が応募条件や手当の対象になる求人もあります。
Q. 転職活動は在職中と退職後のどちらがよいですか?
A. 収入が途切れない在職中の活動がおすすめです。保育士は平日の日中に面接へ行きにくいため、オンライン面談に対応したエージェントを使うと進めやすいでしょう。
Q. 一度異業種に転職してから保育士に戻れますか?
A. 戻れます。保育士資格に有効期限はなく、ブランクのある保育士向けの復職支援研修を実施している自治体もあります。
保育士の経験を活かして次の職場へ進む一歩
保育士から転職を考えたときは、辞めたい理由を「職場の問題」と「仕事そのものの問題」に分けることから始めましょう。職場の問題なら園の移籍、仕事そのものの問題なら事務職や教育サービスなどの異業種が現実的な選択肢になります。
今週できることは、保育の経験を数字で書き出す棚卸しと、気になる職種の求人を3件ほど眺めてみることです。方向性が見えてきたら、オンライン面談に対応した転職エージェントに相談して、年度末退職から逆算したスケジュールを組んでみてください。

