60歳を過ぎてから自分の意思で会社を辞めると、「失業保険は何日待てば振り込まれるのか」「年金と一緒にもらえるのか」と不安になる人が少なくありません。実は60歳以上の失業保険は、辞めるときの年齢が64歳か65歳かで制度そのものが切り替わるという、若い世代にはない分かれ目があります。
2025年4月の雇用保険法改正で自己都合退職の給付制限は2か月から1か月に短縮され、2026年8月1日には60〜64歳の基本手当日額の上限が7,830円に引き上げられました。数字が毎年のように動く分野なので、最新の条件で整理しておきましょう。
この記事でわかること
- 60〜64歳と65歳以上で、もらえる給付がどう違うか
- 自己都合退職の待機期間7日と給付制限1か月の流れ、初回振込の目安
- 60〜64歳の基本手当がいくらになるかの計算例
- 65歳以上の高年齢求職者給付金(一時金)の30日分・50日分の判定
- 年金との調整と、退職日を決めるときの注意点
60歳以上の失業保険は「退職時の年齢」で制度が変わる
雇用保険の失業給付は、離職した日の年齢で区分されます。60〜64歳で辞めた人は現役世代と同じ基本手当、65歳以上で辞めた人は高年齢求職者給付金という一時金の対象です。
| 項目 | 60〜64歳で離職 | 65歳以上で離職 |
|---|---|---|
| 給付の名称 | 基本手当 | 高年齢求職者給付金 |
| 受け取り方 | 4週間ごとに分割で振込 | 一括(一時金) |
| 給付日数(自己都合) | 90日・120日・150日 | 30日分または50日分 |
| 受給要件 | 離職前2年間に被保険者期間12か月以上 | 離職前1年間に被保険者期間6か月以上 |
| 待期期間 | 7日 | 7日 |
| 自己都合の給付制限 | 原則1か月 | 原則1か月 |
| 老齢年金との関係 | 特別支給の老齢厚生年金は停止 | 年金と同時に受け取れる |
| 受給期限 | 離職日の翌日から原則1年 | 離職日の翌日から1年 |
表を見るとわかるように、給付額の大きさでは基本手当、年金との両立では高年齢求職者給付金に分があります。どちらが得かは人によって変わるため、次の章からそれぞれの中身を確認していきましょう。
「65歳」の判定は誕生日の前日
法律上、年齢は誕生日の前日に1つ加算されます。そのため65歳の誕生日の前々日までに離職していれば基本手当、誕生日の前日以降の離職なら高年齢求職者給付金の扱いです。1日違いで制度が変わるので、退職日を会社と相談する際はカレンダーで必ず確かめておきましょう。
自己都合退職の待機期間と給付制限、振込はいつから

自己都合で辞めた場合、ハローワークで求職の申し込みをして受給資格が決まった日から、次の2段階の「支給されない期間」を経ます。
- 待期期間 7日:離職理由に関係なく、全員に共通する期間です
- 給付制限 原則1か月:正当な理由のない自己都合退職に適用されます(2025年4月以降の離職)
ただし、離職日からさかのぼって5年以内に2回以上、正当な理由のない自己都合退職で受給資格の決定を受けている場合は、給付制限が3か月に延びます。転職を繰り返してきた人は該当しないか確認しておくと安心です。
初回振込までのタイムスケジュール例
| 時期 | やること・状態 |
|---|---|
| 退職日 | 会社から離職票が届くのは通常10日前後 |
| 離職票到着後すぐ | 住所地のハローワークで求職申込・受給資格決定 |
| 決定日から7日間 | 待期期間(この間にアルバイトをすると延長されます) |
| 待期満了後1か月 | 給付制限期間(雇用保険説明会・求職活動) |
| 給付制限明けの認定日 | 失業の認定を受け、数営業日後に初回振込 |
実際の流れでは、退職日から初回振込までおおむね2か月前後かかるケースが多いと言われています。退職後すぐに収入が途切れる前提で、生活費2〜3か月分の手元資金を準備しておくと落ち着いて動けます。
定年退職・継続雇用の満了なら給付制限はかからない
60歳以上で特に多いのが、定年退職や、定年後の再雇用(継続雇用)期間が満了しての離職です。これらは「正当な理由のない自己都合」には当たらないため、給付制限はなく、待期7日の後から支給対象になります。
さらに、60歳以上の定年退職者は「しばらく休養したい」場合に、離職日の翌日から2か月以内に申請すると受給期間を最大1年延長できます。旅行や家族の介護などで、すぐに求職活動を始めない人は活用を検討してみてください。
教育訓練を受けると給付制限が解除される
2025年4月以降は、離職日前1年以内または離職後に教育訓練給付の対象講座などを受講すると、自己都合でも給付制限が解除される仕組みが始まっています。パソコンスキルや介護職員初任者研修など、再就職に直結する講座を選べば、待つ期間を学び直しに充てられるでしょう。
60〜64歳の基本手当はいくら?上限7,830円と計算例

基本手当の日額は、離職前6か月の賃金合計を180で割った賃金日額に、給付率を掛けて計算します。60〜64歳の給付率は45〜80%で、賃金が高い人ほど率が下がる仕組みです。
| 項目 | 2026年8月1日以降の額 |
|---|---|
| 60〜64歳の基本手当日額 上限 | 7,830円(改定前7,623円) |
| 全年齢共通の基本手当日額 下限 | 2,562円(改定前2,411円) |
| 給付率 | 45〜80% |
自己都合の給付日数は「年齢」ではなく「加入年数」で決まる
自己都合退職の場合、所定給付日数は年齢に関係なく、雇用保険の加入期間(被保険者であった期間)で決まります。
- 加入10年未満:90日
- 加入10年以上20年未満:120日
- 加入20年以上:150日
長く同じ会社に勤めてきた60代は、150日に該当する人が多いはずです。上限額の7,830円で計算すると、総額の目安は次のとおりです。
| 給付日数 | 上限日額7,830円の場合の総額 |
|---|---|
| 90日 | 704,700円 |
| 120日 | 939,600円 |
| 150日 | 1,174,500円 |
離職前の賃金がおおむね月45万円を超えていた人が、上限に届く目安と言われています。定年後の再雇用で給与が下がった後に辞める場合は、下がった後の6か月分の賃金が計算の基礎になる点に気をつけましょう。再雇用で月給が25万円前後になっていた場合、日額は上限よりかなり低くなります。
65歳以上は高年齢求職者給付金で一時金を受け取る

65歳以上で離職した人は、基本手当の代わりに高年齢求職者給付金を一括で受け取ります。分割ではなく一度に振り込まれるのが大きな特徴です。
| 被保険者であった期間 | 支給額 | 日額5,000円の場合 |
|---|---|---|
| 1年未満 | 基本手当日額の30日分 | 150,000円 |
| 1年以上 | 基本手当日額の50日分 | 250,000円 |
自己都合で辞めた場合は、こちらも待期7日に加えて給付制限1か月がかかります。受給期限は離職日の翌日から1年で、延長制度がない点は見落とされがちな注意点です。退職後に申し込みを先延ばしにしすぎると、期限内に認定日を迎えられず受け取れなくなるおそれがあります。
65歳以上でも条件を満たせば何度でも受け取れる
高年齢求職者給付金には回数の上限がありません。65歳以降に別の会社で6か月以上働き、再び離職すれば、その都度受給資格が得られます。2017年から65歳以上も雇用保険の加入対象になったため、パートや契約社員として週20時間以上働いている人も対象になりえます。
年金との調整と退職日を決めるときの注意点
60〜64歳の基本手当と、同じ時期に受け取る特別支給の老齢厚生年金は併給できません。ハローワークで求職の申し込みをした翌月から、年金のほうが支給停止になります。
ただし特別支給の老齢厚生年金は、男性は1961年4月2日以降生まれ、女性は1966年4月2日以降生まれの人には支給されません。2026年時点で64歳の男性(1961〜1962年生まれ)は対象外のため、調整を気にする必要がないケースがほとんどです。一方、1962年4月2日〜1964年4月1日生まれの女性は64歳から受給できるため、調整の影響を受けます。
「64歳11か月で退職」はどんな人に向くか
65歳の誕生日の前々日までに辞めれば、基本手当(最大150日分)を受け取りながら、65歳以降は老齢基礎年金・老齢厚生年金と並行して受け取れます。一時金50日分の高年齢求職者給付金と比べると、受給額の差は大きくなりがちです。
とはいえ、このタイミングが向くのは「辞めた後もしっかり求職活動をする人」に限られます。失業給付はあくまで働く意思と能力がある人への給付で、認定日ごとに求職活動の実績を求められます。完全に引退するつもりなら、無理に退職日をずらす必要はありません。
65歳以降は年金を繰り下げている人も注意
65歳以降の老齢年金を繰り下げ受給する予定の人は、高年齢求職者給付金を受け取っても繰り下げに影響はありません。年金を早く受け取るか遅らせるかの判断と、失業給付の判断は分けて考えるのが基本です。迷ったときは、年金事務所とハローワークの両方で自分の加入記録をもとに相談すると、数字で比べられます。
受給中の再就職と60代の転職活動の進め方
失業給付を受けながら仕事を探す60代にとって、早く再就職したときの手当も知っておきたいポイントです。
- 再就職手当:65歳未満で、所定給付日数の3分の1以上を残して安定した職に就くと、残日数の60〜70%分がまとめて支給されます
- 高年齢再就職給付金:60〜64歳で基本手当を100日以上残して再就職し、賃金が以前の75%未満に下がった場合に、賃金の最大10%(2025年4月以降の支給率)が支給されます
- 65歳以上の高年齢求職者給付金には再就職手当がないため、一時金を受け取ってから早めに働き始めても損はありません
60代の求職で使いたいサービス
ハローワークには60歳以上向けの「生涯現役支援窓口」があり、シニア歓迎の求人や面接対策を相談できます。あわせて、ミドル・シニア層に強い転職エージェントや、管理職経験を活かせる顧問・業務委託型の求人サービスに登録しておくと、ハローワークに出ていない求人にも出会えるかもしれません。
実際に60代で転職した人の声では、「現役時代の役職より、経理・品質管理・施工管理など具体的な実務スキルを職務経歴書に書いたほうが面接に進みやすかった」という意見が目立つのも特徴です。給付制限の1か月を、職務経歴書の棚卸しと情報収集の期間に充てると、受給開始と同時に応募を始められます。
60歳以上の失業保険でよくある質問
Q. 60歳以上でも自己都合退職だと給付制限はありますか?
A. はい、対象です。2025年4月以降の正当な理由のない自己都合退職は、待期7日の後に原則1か月の給付制限が設けられています。定年退職や継続雇用期間の満了は自己都合に当たらないため、給付制限はありません。
Q. 待機期間の7日間にアルバイトをしてもいいですか?
A. 待期期間中に働くと、その日数分だけ待期期間が延びます。待期が明けた後の給付制限期間中は、ハローワークへの申告を前提に短時間のアルバイトが認められています。
Q. 65歳以上の一時金はいつ振り込まれますか?
A. 自己都合の場合、待期7日と給付制限1か月の後の認定日に失業の認定を受け、その数営業日後に一括で振り込まれるのが一般的です。
Q. 再雇用で給料が下がってから辞めると、失業保険も減りますか?
A. 減ります。基本手当は離職前6か月の賃金をもとに計算するため、給与が下がった後の金額が基準です。給付率は賃金が低いほど高くなるため、下がり方は給与の減り幅より小さくなります。
Q. 失業保険を受け取ると年金は減りますか?
A. 60〜64歳で特別支給の老齢厚生年金を受け取っている人は、基本手当の受給中は年金が停止される点に注意が必要です。65歳以上の高年齢求職者給付金は年金と同時に受け取れます。
Q. 病気で働けない場合も受け取れますか?
A. 失業給付は働ける状態の人が対象です。病気やけがで30日以上働けない場合は受給期間の延長を申請し、回復してから手続きする方法があります。
60代からの次の働き方を決めるために
60歳以上の失業保険は、64歳までの基本手当と65歳以上の一時金で中身が大きく変わります。自己都合退職なら待期7日と給付制限1か月、定年退職なら給付制限なし、そして年金との調整の有無。この3点を押さえておけば、退職日の決め方で損をすることは減らせます。
まずは雇用保険の加入期間と離職前6か月の賃金を確認し、受け取れる金額の目安を出してみましょう。そのうえで、ハローワークの生涯現役支援窓口や60代向けの転職サービスで求人の相場をつかんでおくと、給付の期間を次の仕事への準備期間として活かせます。
※本記事の情報は2026年10月21日時点のものです。給付額や日数は個別の加入記録・離職理由によって異なるため、最終的な判断は住所地のハローワークでご確認ください。

