厚生労働省が公表した「外国人雇用状況」の届出によると、2025年10月末時点で日本で働く外国人は257万1,037人でした。前年から26万8,450人(11.7%)増え、13年連続で過去最多を更新しています。外国人を雇う事業所も37万1,210か所(前年比8.5%増)に広がりました。
数字だけ見ると「自分の転職とは関係ない」と感じるかもしれません。ところが実際の求人票を眺めると、「外国籍スタッフのマネジメント経験歓迎」「特定技能の受け入れ実務ができる方」「やさしい日本語での指導経験」といった条件が、介護・建設・製造・ホテルの求人で目立つようになっています。外国人材の増加は、日本人の転職市場にも新しい職種と評価軸を生み出しているのです。
ここからは、次の4点を最新データとともに整理していきます。
- 外国人労働者が増えている業界・地域と、その背景にある制度変更
- 外国人材の増加で求人が伸びている職種と年収の目安
- 外国籍の同僚と働く職場で評価されるスキル
- 求人の探し方と、応募前に確認したい注意点
外国人労働者257万人の内訳と転職市場への影響
まずは全体像を押さえておきましょう。厚生労働省の集計を在留資格別に見ると、最も多いのは「専門的・技術的分野」の86万5,588人で、前年比20.4%増と伸びが際立ちます。技能実習(49万9,394人・6.1%増)よりも、エンジニアや特定技能などの専門人材が増加の中心になっている点が大きな特徴です。
| 区分 | 人数(2025年10月末) | 前年比 |
|---|---|---|
| 外国人労働者 合計 | 257万1,037人 | +11.7% |
| 専門的・技術的分野 | 86万5,588人 | +20.4% |
| 身分に基づく在留資格 | 64万5,590人 | +2.6% |
| 技能実習 | 49万9,394人 | +6.1% |
| 資格外活動(留学生アルバイト等) | 44万9,324人 | +12.8% |
| 特定活動 | 11万1,074人 | +29.6% |
国籍別ではベトナムが60万5,906人(全体の23.6%)で最多となり、中国の43万1,949人、フィリピンの26万869人が続きます。伸び率ではミャンマー(42.5%増)、インドネシア(34.6%増)、スリランカ(28.9%増)が上位に入りました。
伸びている業界は医療・福祉、宿泊・飲食、建設
人数が最も多いのは製造業で、全体の24.7%を占める規模です。一方で増加率に注目すると、介護を含む医療・福祉が25.6%増、宿泊・飲食サービス業が17.1%増、建設業が16.1%増と、人手不足が深刻な業界ほど外国人材への依存が強まっている構図が浮かび上がります。
地域は東京・愛知・大阪に集中
都道府県別では東京が全体の25.4%、愛知が9.7%、大阪が8.1%を占めています。外国人を雇う事業所の63.1%は従業員30人未満の小規模事業所で、受け入れノウハウを持たない中小企業が多いことも見逃せません。こうした企業では、外国人材の採用・定着を支える日本人スタッフが不足しやすく、そこに転職のチャンスが生まれています。
制度改正で需要が高まる2027年までのスケジュール

転職のタイミングを考えるうえで押さえておきたいのが、外国人材の受け入れ制度そのものが大きく変わる点です。
| 時期 | 出来事 | 転職市場への影響 |
|---|---|---|
| 2024年4月 | 日本語教師の国家資格「登録日本語教員」創設 | 認定日本語教育機関での採用で資格が求められるように |
| 2025年末 | 特定技能の在留者が39万296人(1年で約10万6千人増) | 受け入れ企業・登録支援機関の求人が増加 |
| 2027年4月 | 技能実習が廃止され「育成就労」制度がスタート | 受け入れ体制の見直しで、実務担当者の需要が高まる見込み |
| 2030年3月頃まで | 技能実習との経過措置期間 | 新旧両制度に対応できる人材が重宝されやすい |
育成就労制度は「人材育成」と「人材確保」を目的とした新しい在留資格で、原則3年で特定技能1号の水準まで育てる設計になっています。制度が切り替わる前後は、受け入れ企業も支援機関も手続きの見直しに追われるため、実務を理解している人材は採用されやすい時期でしょう。
ちなみに、特定技能の外国人を支える「登録支援機関」は2026年3月時点で11,208件まで増えましたが、実質的に支援業務を行っていない機関も多いと指摘されています。2027年施行の新制度では支援責任者の要件が厳しくなる見通しで、淘汰と再編が進むと言われています。転職先として検討するなら、支援実績のある機関かどうかを見極めることが大切です。
外国人材の増加で求人が伸びている職種と年収の目安

外国人材が増えると、その採用・教育・生活支援を担う日本人の仕事も増えます。主な職種と、求人サイトで見られる年収の目安を表にまとめました。
| 職種 | 主な仕事内容 | 年収の目安 | 未経験 |
|---|---|---|---|
| 登録支援機関の支援スタッフ | 生活オリエンテーション、役所手続きの同行、定期面談 | 約300万〜390万円 | 可の求人あり |
| 登録支援機関の企画・営業 | 受け入れ企業の開拓、支援計画の提案 | 約440万〜540万円 | 営業経験があれば可 |
| 受け入れ企業の外国人採用担当 | 海外採用、在留資格の申請準備、定着支援 | 約400万〜600万円 | 人事経験が求められやすい |
| 多国籍チームの現場リーダー | 介護・建設・製造・ホテル現場の指導と育成 | 業界水準+手当 | 業界経験が前提 |
| 日本語教師(登録日本語教員) | 就労者・留学生への日本語教育 | 常勤で約300万〜450万円 | 資格取得が必要 |
年収は勤務地や企業規模で大きく変わるため、あくまで求人票ベースの目安として見てください。特に登録支援機関は、月給25万1,300円〜32万2,800円程度の事務スタッフ求人が多い一方、企業開拓を担う営業職では予定年収443万〜538万円という例も見られます。
日本語教師は国家資格化で「資格の有無」が分かれ目に
日本語教師を目指す場合は、2024年4月に始まった国家資格「登録日本語教員」の取得が事実上の前提になりつつあります。令和7年度の日本語教員試験は受験者1万7,597人のうち1万1,876人が合格し、合格率は67.5%でした。ただし基礎試験から全科目を受けた人に限ると合格率は35.7%まで下がるため、未経験から挑戦するなら半年〜1年の準備期間を見込んでおくと安心でしょう。
行政書士・社労士の資格も評価されやすい
在留資格の申請取次を担う行政書士や、外国人雇用の労務管理に強い社会保険労務士も、受け入れ企業や支援機関から声がかかりやすい資格です。すでに資格を持っている人は、職務経歴書で「外国人雇用」「在留資格」というキーワードを打ち出すだけで、スカウトの数が変わることもあります。
外国籍の同僚と働く職場で評価されるスキル

外国人材と働く職場では、英語力よりも次のようなスキルが重視される傾向があります。ベトナム、インドネシア、ミャンマーなど国籍が多様化しているため、特定の外国語より「伝わる日本語」と仕組みづくりの力が問われるからです。
- やさしい日本語:「確認してください」を「見てください」に言い換えるなど、短く具体的に伝える力
- 手順の見える化:写真やピクトグラムを使ったマニュアル作成、作業の標準化
- 異文化への理解:宗教上の食事制限や礼拝時間、母国の祝日などへの配慮
- 在留資格の基礎知識:在留期限の管理、資格外活動の範囲など、違反を防ぐための知識
- 面談・相談対応:仕事と生活の両面の悩みを聞き取り、離職を防ぐ力
実際に介護の現場でリーダーを務める人の体験談では、「申し送りをやさしい日本語に書き換えたら、日本人の新人も理解しやすくなった」という声がよく聞かれます。外国人材に向けた工夫は、結果としてチーム全体の働きやすさにつながることが多いようです。
職務経歴書でのアピール例
外国籍スタッフと働いた経験がある人は、数字を添えて書くと伝わりやすくなります。
- 「ベトナム国籍の特定技能スタッフ4名のOJTを担当し、6か月後の定着率100%を達成」
- 「作業手順書を写真付き・やさしい日本語版に改訂し、新人の独り立ちまでの期間を3か月から2か月に短縮」
- 「在留期限の管理表を作成し、更新漏れゼロを2年間継続」
外国人材関連の求人の探し方と応募前の注意点
このジャンルは求人票のタイトルだけでは見つけにくいため、検索の工夫が欠かせません。求人サイトでは「特定技能」「登録支援機関」「外国籍スタッフ」「グローバル人材」「多国籍」といったキーワードで検索すると、関連求人を効率よく拾えます。
転職エージェントに伝えておきたい希望条件
非公開求人が多い人事・管理職ポジションを狙うなら、転職エージェントの活用が近道です。面談では「外国人材の受け入れに関わる仕事を希望している」「やさしい日本語での指導経験がある」と具体的に伝えると、担当者も求人を探しやすくなります。製造・建設など業界特化型のエージェントは、受け入れ企業とのつながりが強い傾向があります。
応募前に確認したい3つのポイント
- 支援体制の実態:支援対象者1人あたりの担当人数。1人で50人以上を受け持つ機関は、残業が増えやすいと言われています
- 夜間・休日対応の有無:生活トラブルの緊急連絡を受ける当番制があるかどうか
- 2027年の制度移行への備え:育成就労制度への対応方針を面接で質問すると、会社の将来性を判断する材料になります
一方で、外国人材と働くことに向いていない人がいるのも事実です。言葉や習慣の違いに毎回いら立ってしまう人や、マニュアル外の相談対応を負担に感じる人は、応募前に仕事内容をよく確かめておきましょう。
よくある質問
Q. 英語が話せなくても外国人材関連の仕事に就けますか?
A. 就けるケースは多いです。働く外国人の国籍はベトナム・中国・フィリピン・インドネシアなどアジア圏が中心で、職場の共通語は日本語になることがほとんどです。英語よりも、やさしい日本語で伝える力のほうが重視されます。
Q. 登録支援機関の仕事は未経験でも応募できますか?
A. 支援スタッフは未経験可の求人もあります。ただし2027年の新制度では支援責任者の要件が厳しくなる見通しのため、人事・総務・接客などの経験をアピールできると有利になるでしょう。
Q. 育成就労制度が始まると仕事は減りませんか?
A. 技能実習は廃止されますが、外国人材を受け入れる仕組み自体は続きます。むしろ制度移行期は手続きや教育体制の見直しが必要になるため、実務を理解する人材への需要は高まると考えられます。
Q. 日本語教師の国家資格はどのくらいで取れますか?
A. 試験ルートの場合、未経験からなら半年〜1年程度の学習期間を見込む人が多いようです。令和7年度試験の全科目受験者の合格率は35.7%で、計画的な準備が欠かせません。
Q. 外国人材の増加で日本人の求人は減りませんか?
A. 外国人労働者が多い介護・建設・製造は、そもそも人手不足が深刻な業界です。現時点では日本人の求人が減るというより、外国人材をまとめるリーダー職や支援職など、新たな役割が増えている状況です。
Q. 地方でも外国人材関連の求人はありますか?
A. あります。都道府県別では東京・愛知・大阪が多いものの、外国人を雇う事業所は全国で37万か所を超えています。地方の製造業や農業、介護施設でも受け入れが進んでおり、地元密着の登録支援機関の求人も珍しくありません。
外国人材と働く経験を次のキャリアの武器にしよう
外国人労働者257万人という数字は、日本の職場がすでに多国籍化している現実を示しています。2027年の育成就労制度スタートに向けて、受け入れ実務や多国籍チームのマネジメントができる人材の価値はさらに上がっていくでしょう。
まずは今の職場での経験を棚卸しし、外国籍の同僚と関わったエピソードを数字で書き出してみてください。そのうえで転職エージェントに希望を伝え、非公開求人も含めて選択肢を広げておくと、制度が切り替わるタイミングで有利に動けます。

