35歳を過ぎてから求人サイトを開くと、「本当に今からでも間に合うのだろうか」と手が止まる方は少なくありません。転職業界で長く語られてきた「35歳転職限界説」は、今も検索され続けている言葉です。
結論から書くと、2025年の転職データを見る限り、35歳で転職の扉が閉じるという状況ではありません。一方で、20代と同じ戦い方が通用しなくなるのも事実です。ここでは公的統計と大手転職サービスの調査をもとに、限界説の正体と35歳以降に通用する転職の進め方を整理しました。
この記事でわかること
- 35歳転職限界説が生まれた背景と、2026年時点で当てはまらなくなった理由
- 年齢層別の転職者割合・年収が上がった人の割合などの具体的なデータ
- 35歳以降に企業が見ているポイントと、職種別の狙い目
- 30代後半の転職でよくある失敗と、内定までのステップ
35歳転職限界説はどこから来たのか?生まれた背景を整理
限界説が広まったのは、2000年代ごろまでの採用慣行が背景にあると言われています。当時は新卒一括採用と年功序列が強く、中途採用でも「若いうちに採って社内で育てる」という考え方が主流でした。求人票に「35歳まで」と年齢上限を書く企業も珍しくなかったようです。
年齢制限の禁止で求人票から「35歳まで」が消えた
2007年の雇用対策法改正により、募集・採用時の年齢制限は原則禁止になりました(現在は労働施策総合推進法)。例外として「長期勤続によるキャリア形成のため若年者を募集する場合」などは認められていますが、求人票に一律で年齢上限を書くことはできません。
ただし、法律が変わっても企業の本音がすぐに変わったわけではありません。書類選考の段階で年齢を考慮する会社は今も存在するため、「表向きは制限なし、実態は若手優先」という求人が残っている点には注意が必要です。
ポテンシャル採用から即戦力採用へのシフト
限界説の根拠は「未経験の若手を育てる採用」が前提でした。ところが人手不足が続くなか、企業は育成に時間をかけるより、入社直後から成果を出せる人材を求めるようになっています。経験を積んだ30代後半〜40代は、むしろこの即戦力採用の中心層です。
データで見る35歳以上の転職のリアル

感覚論ではなく、数字で現状を確認していきます。
転職者の平均年齢は32.9歳で3年連続上昇
転職サービス「doda」の調査(2025年1〜12月にdodaエージェントサービスを利用して転職した約6万件が対象)によると、2025年の転職者の平均年齢は32.9歳で、3年連続の上昇となりました。男性は33.8歳、女性は31.4歳です。
年代別では、最も多いのが20代後半、次いで30代後半という結果でした。さらに「40歳以上」の割合は17.5%で、2022年比で3.6ポイント増えています。35歳を超えた層が転職市場の中心的な存在になりつつあることがわかります。
| 指標 | 数値 | 出典 |
|---|---|---|
| 転職者の平均年齢(2025年) | 32.9歳(3年連続上昇) | doda調査 |
| 転職者に占める40歳以上の割合 | 17.5%(2022年比+3.6pt) | doda調査 |
| 転職者が多い年代 | 1位20代後半・2位30代後半 | doda調査 |
| 転職で賃金が増えた人(35〜39歳) | 38.0% | 厚生労働省 雇用動向調査 |
| 転職で賃金が増えた人(40〜44歳) | 41.3% | 厚生労働省 雇用動向調査 |
35歳以降でも年収アップする人は約4割
厚生労働省の雇用動向調査では、転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した人の割合が全体で37.2%でした。年齢別に見ると、30〜34歳が44.6%、35〜39歳が38.0%、40〜44歳が41.3%です。30代前半よりは下がるものの、40代前半でも4割強が年収アップを実現しています。
実際に、管理職経験や専門資格を持つ人は年収が上がりやすく、異業種・未経験職種への転身では下がりやすい傾向があります。「35歳だから年収が下がる」というより、何を武器に転職するかで結果が分かれると考えたほうが実態に近いでしょう。
35歳以降の転職で企業が見ている4つのポイント

20代の選考では伸びしろや人柄が重視されますが、30代後半からは評価の物差しが変わります。面接で問われやすい点を押さえておきましょう。
1. 再現性のある実績
「前の会社だから出せた成果」ではなく、環境が変わっても再現できる成果かどうかが見られます。売上や改善率などの数字に加え、成果を出した手順まで説明できると評価が上がります。
面接での回答例:「前職では問い合わせ対応の手順書を作り直し、新人の独り立ちまでの期間を3か月から6週間に短縮しました。業務を分解して標準化する進め方は、御社のカスタマーサポート部門でも活かせると考えています」
2. マネジメント・後輩育成の経験
役職がなくても、プロジェクトのリーダーや後輩の指導経験は立派なアピール材料です。何人のチームで、どんな課題をどう解決したかを具体的に話せるよう準備しておきます。
3. 柔軟性と年下上司への適応力
35歳以降の転職では、配属先の上司が年下になるケースが増えます。企業側が気にするのは「前職のやり方に固執しないか」という点です。新しい環境のルールを学ぶ姿勢を、エピソードで示せると安心感につながるでしょう。
4. 年収・条件の希望が現実的か
経験者採用は年収レンジが比較的はっきりしています。希望額が求人の上限を大きく超えると、スキルが合っていても見送られることがあります。現年収と市場相場の両方を把握したうえで、希望額に幅を持たせるのが無難です。
35歳から狙いやすい業界・職種と年収の目安

年齢のハードルが比較的低い分野を知っておくと、応募先選びで遠回りせずに済みます。dodaの調査では、事務・アシスタント系や販売・サービス系などで35歳以上の転職割合が上がっていると報告されています。
| 分野 | 35歳以降が評価されやすい理由 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| 同業種・同職種 | 経験をそのまま即戦力として評価される | 現年収維持〜50万円程度アップ |
| IT・DX推進 | 業務知識とITスキルを両方持つ人材が不足 | 450万〜700万円 |
| 介護・医療 | 慢性的な人手不足で年齢不問の求人が多い | 300万〜450万円 |
| 施工管理・建設 | 有資格者の需要が高く40代以降も採用が活発 | 450万〜650万円 |
| 法人営業 | 業界知識と人脈がそのまま武器になる | 400万〜650万円 |
※年収の目安は求人サイトの掲載レンジを参考にした一般的な水準です。地域や企業規模で大きく変わります。
未経験職種に挑戦するなら「掛け算」で考える
35歳を過ぎてからの完全な未経験転職は、正直なところ難易度が上がります。そこで有効なのが、これまでの経験と新しい分野を掛け合わせる考え方です。たとえば「経理経験×会計ソフトの導入支援」「販売経験×ECサイト運営」のように、前職の知識が活きる入口を選ぶと採用側も評価しやすくなります。
30代後半の転職でよくある失敗と内定までのステップ
年齢そのものより、進め方のミスで苦戦するケースが目立ちます。代表的な失敗パターンを先に知っておきましょう。
よくある失敗3パターン
- 勢いで退職してから活動を始める:空白期間が長引くと焦りから条件を妥協しがちです。在職中に活動を始めるのが鉄則でしょう。
- 応募数を絞りすぎる:30代後半は書類通過率が20代より下がりやすいため、10社前後を並行して応募する人が多い印象です。
- 職務経歴書が「業務の羅列」になっている:担当業務を並べるだけでは強みが伝わりません。成果と工夫を中心に書き直すと、通過率の改善が期待できるでしょう。
内定までの5ステップ
- キャリアの棚卸し(1〜2週間):実績・スキル・経験した役割を書き出し、数字で語れるものを選びます。
- 市場価値の確認(1週間):求人サイトで同条件の年収レンジを調べ、転職エージェントで客観的な評価を聞きます。
- 応募書類の作成(1〜2週間):職務経歴書は応募先ごとに強調点を変えるのがコツです。
- 応募・面接(1〜2か月):複数社を並行して進め、面接の振り返りを毎回メモします。
- 条件交渉・退職手続き(1〜2か月):内定後に労働条件通知書を確認し、引き継ぎ期間を確保しましょう。
全体で3〜6か月を見込んでおくと、焦らずに比較検討しやすくなるはずです。一人で方向性を決めきれない場合は、転職エージェントに加えて、キャリアの棚卸しを専門に手伝うキャリアコーチングを使う選択肢もあります。
よくある質問
Q. 35歳を過ぎると書類選考に通りにくくなりますか?
A. 未経験職種や若手育成枠の求人では通りにくくなる傾向が見られます。ただし経験者採用の求人では年齢より実績が重視されるため、経験を活かせる求人に絞ると通過率は上がりやすいでしょう。
Q. 35歳で未経験の業界に転職するのは無理ですか?
A. 無理ではありませんが、前職の経験が少しでも活きる職種を選ぶのが現実的です。介護やIT、施工管理など人手不足の分野では、30代後半の未経験者を採用する企業もあります。
Q. 35歳の転職で年収は下がりますか?
A. 厚生労働省の雇用動向調査では、35〜39歳で転職後に賃金が増えた人は38.0%でした。同業種・同職種の転職なら維持〜アップ、未経験分野なら一時的に下がるケースが多いと考えておくとよいでしょう。
Q. 転職回数が多いと35歳以降は不利になりますか?
A. 回数そのものより「なぜ転職したか」が一貫しているかが見られます。各社で何を身につけ、次にどう活かしたかを一本の流れで説明できれば、マイナス評価は和らぐと考えられます。
Q. 35歳と40歳では転職の難しさは違いますか?
A. 40代になると、管理職経験や高い専門性を求められる求人の比率が高まる傾向です。35歳前後はまだ実務担当としての採用枠も多いため、迷っているなら早めに動き始めるのが有利です。
Q. 転職エージェントは35歳以上でも使えますか?
A. 使えます。doda調査でも40歳以上の転職者割合は年々増えています。ただし担当者によって得意な年代や業界が異なるため、2〜3社に登録して相性を比べる方法が定番です。
35歳からの転職を「限界」ではなく「転機」にするために
35歳転職限界説は、若手育成型の採用が中心だった時代の名残です。2025年の転職者の平均年齢は32.9歳、40歳以上の割合も17.5%まで増えており、データは「35歳以降も十分に動ける」ことを示しています。
大切なのは、年齢を言い訳にせず、これまでの経験を数字と再現性で語れるよう準備することです。まずは今週中に職務経歴を書き出し、同じ職種の求人の年収レンジを3件調べるところから始めてみてください。小さな一歩でも、動き出した人から選択肢は広がっていきます。

